おむすびコラム

国民の司法参加とは、どんな制度ですか?

一般市民が司法作用に参画して国民の利益に寄与、貢献する現象を「国民の司法参加」と言います。 具体的には現在、大きく分けて2つ、平成21年から始まった《裁判員制度》と、実はあまり知られていませんが、以前から設けられている《各種の調停委員》という制度があります。
《裁判員制度》は、国民のみなさんに裁判員として刑事裁判に参加してもらい、被告人が有罪かどうか、有罪の場合どのような刑にするかを職業裁判官と一緒に判断し決めてもらう制度です。

この制度の目的は、裁判に国民の視点、感覚が反映され、裁判が身近で分かりやすくなり、司法に対する国民の信頼が向上することを目指したもので、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア等でも行われています。

選出方法は、くじによって選ばれ、事件ごとに6名の裁判員が選任され、3名の職業裁判官とともに刑事公判を担当します。 一方、《各種の調停委員》は家庭裁判所で活動する「家事調停委員」、「参与員」と、簡易裁判所で「民事調停委員」、「司法委員」があり、こちらは一般の方から募るのですが、実際には自薦・他薦による立候補に基づき書類審査と面接があり、無条件で誰でもなれるとまではいっていません。地域のボランティアやPTAの経験者など世話好き・人好きで他薦を受けるような人、さらには勉強熱心で知識・教養などが豊富な人が選任されているようです。また、司法委員については実際には、不動産鑑定士や司法書士、公認会計士、建築士、弁護士等の専門家が割合多く選ばれています。調停委員や参与員の任期は二年で、司法委員の任期は一年ですが、ほぼ更新されることが普通で、70歳定年制となっています。

裁判員制度は国民の義務なので 必ず参加しなければならない?

《裁判員制度》は、特定の職業や立場の人に偏らず、広く国民の皆さんに参加してもらう制度ですので、原則として選任を辞退できません。70歳以上、学生、その他やむを得ない正当な理由がなく、選任手続きに出頭しない場合は「10万円以下の過料」という罰則規定まであります。

そもそも「司法に参加する」とは どんな意味があるのですか?

ご承知のように、我が国は権力が一部に集中して、腐敗・専横しないように、司法・立法・行政の三権分立で成り立っています。このうち「立法」には選挙という形で、「行政」には聴聞制度、行政情報の公開請求という形で、国民が関与する仕組みがあり、国民が主権者としての役割を果たしています。
しかし、司法では、どうでしょうか? 一般国民にとって、司法・裁判所は敷居の高い世界、自分たちとは関係のない別世界といった感覚ではないでしょうか。またこれまで国民が主権者として司法に関わる仕組みも不十分でした。
《裁判員制度》はこのような問題に対応する為に誕生しました。司法の分野においても、私たち国民の意識、判断が反映される社会を作らねばなりません。

これまで司法に一般の方が関与してこなかったのはなぜ?

まず、民主主義・国民主権とは国に主権があるのではなく、国民に主権、主導権があるということですが、ヨーロッパでは独裁者や特権階級から権力を奪うまでに多くの民衆の血が流れた歴史があります。多大な犠牲を払って一般国民が主権を獲得した訳ですから、自分たちがコントロールし、自分たちが社会を作っていくのが当たり前と考えます。また、権力作用に対し黙っていたのでは個々人の権利が侵害される危険性を知っています。 一方、日本人にはお上には逆らえないという庶民意識の歴史が長く、一般民衆が勝ち取った権力・権利という感覚もない。大抵は他人任せで、黙っていても誰かが何とかするだろうという他力本願なのではないでしょうか。我々は、自分たちが主権者であり、自分たちの暮らしは自分たちで守るべきこと、黙っていることは自分たちの主権を放棄することと同じだということをもっと自覚すべきではないでしょうか。

どうすれば、司法参加への意識が 高まるのでしょうか?

これは、現在の司法・法曹界の側にも責任があると思います。例えば法廷を中心とした裁判所などは暗い雰囲気と重厚な感じで、敷居が高い印象を与え、国民を遠ざけてきたのではないでしょうか。裁判の傍聴など門戸は一応開かれているわけなので、親しみやすい環境作りや情報公開・啓蒙活動などを活発化して、司法・法曹界が国民との距離を縮めていく変革をしていく必要があると思います。 また、多くの国民の方に、《裁判員》《各種の調停委員》という役割を一部の人だけのものにせず、もっと司法に関心を寄せてほしいです。
また普段から世の中のことについていろいろと議論する習慣を持つことも我々には重要ではないでしょうか。その意味で次世代を担う小学生・中学生という、頭の柔らかい時から、点取り虫の受験勉強ばかりでなく、欧米のようなディスカッションの習慣を自然に身に付け、将来の我が国の民主主義を支えていってほしいと思います。

コラム一覧へ戻る