法律上では自転車はどう位置づけされますか?
道路交通法(以後、道交法)上の車両は自動車・原付・軽車両及びトロリーバスと区分されていますが、自転車は軽車両にあたります。軽車両には自転車・馬車・リヤカー・荷車などが含まれます。しかし、これらのことは一般的には知名度は低い状況と言えます。
道交法上の軽車両の扱いは「例外」がかなりあることもあって国民意識としては、自動車や原付のようにときには「走る凶器」になり得るという意識に欠けると思います。その結果、みなさんも新聞等のニュースでご存じのように被害者の方が死亡されるというような重大事故も結構発生しています。自転車に関する正しい知識の啓蒙及びその習得が大切です。
自転車の例外的扱いについて具体的に教えて下さい。
自転車も道交法上、車両と定められている以上、運転者には守るべき法律上の義務が発生します。自転車が歩道を走るのは原則不可ですし、飲酒運転も、夜間の無灯火運転も本来は罰則対象です。しかしながら、先ほどの「例外的扱い」が存在し、車道を走ることが困難な場合、例えば駐車違反が多くて車道の左側を走れない・交通量が多く車道を走るには危険性が高い場合などは歩道を徐行で通行しても構わないことになっています。
この場合の徐行とは「時速8km以下」です。感覚としてはゆっくりペダルをこぐくらいです。歩行者に対し警笛を鳴らしながら時速8kmを優に超えるスピードで走行するなどは、道交法的には論外です。
自転車対歩行者の事故は、自転車走行は違法になるのですか?
その可能性が高いです。道交法上、弱者優先の原則がありますので、自転車対歩行者の場合は自転車側の過失がより大きく問われます。しかし、ここでも軽車両としての特殊性の問題が存在し、現実に生じる深刻な事態にこたえられていないというのが現状です。
本来、車両としての運転免許制度がある場合、法違反の運転で事故が起きると、免停などの行政処分としての責任・刑事責任・民事責任という3つの責任を負います。自転車の場合は、免許制度がないため行政処分上の責任はありません。加えて、自転車は自動車損害賠償保障法(以後、自賠法)の対象車両にになっていません。
自賠法は被害者保護の観点から立法されたもので、運転者側の強制保険となっています。自動車や原付を買う時に加入が義務づけられる自動車損害賠償責任保険がそれにあたります。自賠法では、運転者側が運転行為について注意を怠らなかったこと、被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと、自動車構造上の欠陥または機能の障害がなかったことの三つを立証しないかぎり、運転者や自動車の所有者等が賠償責任を負うものとされています。この法律の適用がない自転車の場合、被害者は不法行為責任を定めた民法709条に照らして損害発生・加害者の過失の証明に成功しないと、運転者に損害賠償義務を負わせることはできません。
つまり、自転車事故にあっては「弱者保護・被害者救済」の理念が現実には実現されていないわけです。被害者にとってはこれらの証明責任が実際大きな負担となっています。
裁判で高額賠償の判決が出たときの支払いはどうなるのでしょうか?
はい、被害者側にとって最も深刻なケースは加害者たる自転車の運転手が中学生以上の生徒の場合です。法律上加害者本人に賠償責任は課せられるのですが、実際上は支払い能力がありません。この種のケースでは原則として親に監督者賠償責任を負わせることは法律上難しいのです。結果、被害者側は泣き寝入りせざるを得ません。
自転車側が注意していくべきことを教えて下さい。
歩行者という弱者に対しては自転車走行は加害者となる可能性が高い、自転車は凶器になり得るという認識を改めて持つことが大切です。そして、将来に事故を起こしてしまったときに備えて保険加入を検討することをお勧めします。その一つに「TSマーク」というものがあります。
これは財団法人・日本交通管理技術協会が運営する付帯保険で、@人を負傷させたときの賠償として最大2千万円がA自分が被害者になったとき(死亡・重い後遺症)に最大百万円が、各補償されます。自転車店で1千?2千円支払って点検を年1回受ければ加入できる保険です。自転車に乗る方は加入を検討してみるにこしたことはありません。
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